地震国、日本における地震対策の歴史

これから何回かに分けて、地震と建物の耐震設計に関するお話をさせていただきます。

地震国、日本

日本は言うまでもなく地震国です。日本ほど大きな地震に数多く襲われる国は、世界を見回してもあまりありません。

〈過去の大地震と法律〉

発生年月日 地震名 マグニチュード 震源 建築基準法関連事項その他
1923.9.1 関東地震 7.9 相模トラフ 市街地建築物法が改正され地震力規定が設けられた
1948.6.28 福井地震 7.1 内陸直下型地震 1950年建築基準法制定
1964.6.16 新潟地震 7.5 日本海東縁変動帯 地盤の液状化
1968.5.16 十勝沖地震 7.9 太平洋プレート 鉄筋コンクリート柱のせん断破壊
→1971年建築基準法改定
1978.6.12 宮城県沖地震 7.4 太平洋プレート 1981年いわゆる『新耐震基準』ができる
1995.1.17 兵庫県南部地震 7.3 内陸直下型地震
(六甲淡路島断層帯)
震度7設定後初の観測
新耐震以前の建物に多くの被害
2003.9.26 十勝沖地震 8.0 太平洋プレート 長周期地震動により苫小牧の石油タンク火災発生
2011.3.11 東北地方
太平洋沖地震
9.0 太平洋プレート 津波
2016.4.14 熊本地震 7.3 内陸直下型地震 震度7が2回連続、長周期パルス地震

この表は、これまでに日本を襲った大地震をピックアップして示したものです。そこには地震のマグニチュードが示してあります。この言葉の意味は別の回で説明しますが、地震の規模(エネルギー)を示すもので、7.0を超えれば相当大きな地震と考えてよいと思います。

地震対策の歴史

日本では地震のたびに大きな被害をこうむり、その反省からいろいろな対策を講じてきたという歴史があります。
これを法律に即して説明すると、

1950年に建築基準法が制定され、日本で建設される建物はこの法律の規定を満たすことが義務づけられました。

建物の耐震性に関する規定もここに設けられています。また、その耐震性に関する規定は大きな地震のたびに改定されてきました。逆に言うと、地震のたびに建物の耐震設計上の弱点がわかってきたということになります。

初めからもっと丈夫に作っておけばと言いたくなりますが、最強の地震をあらかじめ設定したくても、それがなかなか難しいのです。

地震は予測できない?

2011年にマグニチュード9.0の東北地方太平洋地震が来たと思ったら、2016年の熊本地震では震度7が2回連続してきたり、長周期パルス地震というものが観測されたりと、学者や設計者などその道の専門家といわれる人々を驚かせるような地震が次々とやってくるというのが実状です。

耐震技術は日進月歩

ただし、何月何日何時に地震が起きるということを正確に予測することは今でも難しいといえますが、日本中に地震計が設置され、小さな地震であっても気象庁を通じて地震のマグニチュード、各地の震度、震源などがすぐに報道されるということは非常な進歩といえます。

地震の起こるメカニズムや建物への伝わり方などの知見も確実に増えると同時に、建物の耐震設計に関しても、コンピューターによる解析技術の進歩と相まって新しい耐震技術が生まれています。次回から、その点についていくつかご紹介したいと思います。

監修

慶伊 道夫
1948年9月2日生まれ 北海道室蘭市出身 1971年 京都大学工学部建築学科卒業/1973年 京都大学大学院工学研究科建築学専攻修了 構造設計一級建築士 技術士(建設部門)

日建設計にて東京スカイツリーをはじめ多数の建築物の設計に携わり、現在は住友ゴム工業株式会社 ハイブリッド事業本部 制振ビジネスチーム顧問を務める。