地震による地面の揺れ
今回説明するのは、地面の揺れ(加速度)と建物にはたらく力の関係についてです。
第2回のコラムでも地震の揺れについて少しお話ししましたが、次の図は、地震による地面の揺れの、ある場所での観測記録をグラフにしたものです。
グラフでは、横軸が時間(単位は秒)、縦軸が地面の加速度(単位はcm/sec2※)を表しています。
※sec:秒
この地震記録(1940年に発生したM7.1のエルセントロ地震の波形です。構造計算においてよく用いられます。)では、縦軸の最大値が350cm/sec2くらいになっているのがおわかりいただけるかと思います。
この加速度の大きさは、おおざっぱに言うと震度6強程度に対応しますが、地震によって観測される最大加速度はもっと小さいものから1G(980cm/sec2)を大幅に超えるものまであります。
建物にはたらく、3つの力
建物には「慣性力」「復元力」および「減衰力」というものが同時にはたらくことになります。
次の図は、そのときの状態を模式的に示したものです。
ただし、この図では、話を単純にするために建物の質量(重量)を1点に集中して示しています。質量という言葉にも抵抗がある方が多いと思いますが、ここでは重さの素みたいなものと考えてください。
「慣性力」とは、昔ガリレオが発見したとされるもので、止まっているモノや、等速で運動しているモノが動きだしたり、速さに変化が生じる場合、即ち加速度がはたらく場合に発生する力と思ってください。
地震による地面の揺れは絶えず揺れる速さが変化します。そのため建物にも加速度が働き慣性力が生じます。慣性力の大きさは質量×加速度で表されます。ただし、ここで注意していただきたいのは、地面の加速度と建物に生じる加速度は異なるということです。第2回のコラムで震度だけではきまらないと言ったのはこのことをさしています。
「復元力」というのは、変形した建物を元に戻そうとして柱や梁にはたらく力のことです。
「減衰力」は自動車のブレーキのようなもので、建物の動く速さを小さくしようとしてはたらく、建物自体に内蔵されている力だと思ってください。
すなわち、建物にはたらく力=慣性力+減衰力+復元力となります。
大分話が込み入ってきましたが、地面の揺れ(加速度)が冒頭のグラフのように刻々変化する中で、上記の力も刻々と変化することになります。上の図の矢印の向きも変化します。
耐震強度は「復元力」で判定する
この3つの力の中で、建物の耐震強度を判定するものとして復元力があります。
この復元力を失うということは建物の倒壊を意味しますので、これが地震のときにどのくらいの大きさになるかを知った上で、この力に耐えるように建物の柱や梁を設計することになります。
また第2回のコラムでも説明したように、地震の方向としては水平2方向と鉛直方向の3方向がありますが、建物の耐震安全性に大きく影響するのは水平方向だと考えられています。
建築基準法では、この地震力が中小地震と大地震の2段階に分けて定められています。
以上が建物にはたらく力の概要ですが、実は、建物にはたらく力は、地震の加速度(最大加速度)以外に建物の「固有周期」というものにも大きく影響を受けます。
次回は、この固有周期と建物にはたらく力との関係についてお話しします。