今回は、地盤と地震波の関係について説明します。
揺れは地盤に大きく左右される
前回のコラムで地震動波形は不規則な波であると説明しましたが、その原因はひとえに地盤にあるといってよいと思います。
図7-1は、地震が発生してその揺れが建物に伝わってくる経路を模式的に示しています。
出典:「地下構造と揺れの増幅との関係を表す模式図」
(地震調査研究推進本部/提供元:愛知工業大学 入倉孝次郎氏) ※一部加工
模式図内の用語を順に見ていきながら、説明しましょう。
地震基盤
岩盤で非常に硬いため、震源から発生した地震は、ここまでは地盤の剛性の影響を受けずに伝わると考えられています。
この「地震基盤」までの深さは場所により異なりますが、地表に出ている場合もあれば地表から数kmの深さに及ぶこともあります。関東や関西の大都市圏ではこの深さが数kmに及ぶため、通常のボーリング調査で調べることは難しく、他の調査方法が考えられています。
通常、地震波は地震基盤から上方に増幅しながら進んでいくと考えられています。
工学的基盤
比較的大きな建物の支持層となる、固い地盤です。
この層までの深さが50mになることはまれで、通常のボーリング調査でも調べることができます。
建築基準法では、工学的基盤における地震の大きさ(加速度)を規定していて、これに基づいて作成した地震動波形を「告示波」と呼びます。
表層地盤
工学的基盤から上を「表層地盤」と呼び、この層の剛性は場所により大きく異なります。
この層の剛性が小さい地盤が、いわゆる「軟弱地盤」です。軟弱地盤では激しい地震の増幅が起こることから、同じ地震であっても、比較的地盤の良い地域に比べて建物に大きな地震力がはたらきます。
せん断波速度
地盤の剛性を示す指標だと考えてください。この「せん断波速度」を調べる方法はいくつか考えられていますが、数字が大きいほど固い地盤を表します。
進化する予測手法
さて、図7-1を「模式的」と言ったのは、地震波は屈折や反射を繰り返しながら3次元的に伝わってくるので、これを正確に予測することは簡単ではないためです。
しかし、現在はある程度の予測が可能になりつつあります。皆さんが各地域の行政機関のホームページでご覧になる、図7-2のような地震ハザードマップはこの予測手法を用いて作られています。
出典:大阪市公式ウェブサイト
その方法としては、まず地震の起こる場所(震源)やその規模(マグニチュード)を過去の記録や調査に基づいて予測します。
そして、地震動の伝達経路としての地盤の変形特性(剛性)がわかれば、建物のある位置の地震動波形をコンピューターで計算できます。(第5回のコラムで剛性について説明しましたが、土にもその地層に応じた剛性があります)
最近では、この地震動波形を人工的に作って建物の耐震設計に用いるということが一般的になりつつあります。もちろん、地盤の変形特性についてもいろいろな調査方法が生み出され、それを可能にしています。